この町内の片隅から

よく分からない

梅雨時に思う ⑤


『これが、精一杯です。これ以上は何ともなりません。
誠心誠意尽くして作ってきました。』



退院してしばらく経ったある日の昼下がりのこと、
突然訪問された、加害者側の保険担当者さんに
見せられたのは、
示談提案書でした。



幾つかの項目別に金額が書かれ、最後に合計金額が記載されていました。
まだ通院中で、ときどき頭痛もするし、いきなり見せられても
1人では判断がつきません。


それが妥当な金額かどうかもサッパリ分かりません。



そればかりでなく、
何と説明したらいいのでしょうか?保険担当者さんには
すごく失礼なのですが、
実はその時、担当者さんを一目見た時から、
イヤな気がしてならなかったのです。


色で言ったら『赤』でした。
言葉で言ったら『ウソ』でした。




その日はお引き取り願ったのですが、それから何度もしつこく催促の電話が
ありました。
まだ通院中の身でどうしていいか分かりませんでした。



曖昧な日が続いたある日の午後、
珍しく仕事中のダンナから電話があったのです。



『さっき、保険の担当者から、会社にいるオレにまで電話があった。
向こうも困ってるし、あんまり焦らすな。鬱陶しいし、
さっさと判押して終わらせてよ。』


(え!なんで!)



驚愕したわたしは、すぐ担当者さんに連絡しました。



『いま、主人から聞きました。おかしくないですか?
痛い目に遭ったのはわたしです。当事者はわたしです。
家族とは言え、関係ない人に話が行くのはおかしくないですか?
わたしに言ってください。2度とこんな真似しないで下さい。』




それまで、示談とかお金のことなんかあんまり頭になく、
事故には遭ったけど
生きているから
まぁいいか……なんて


それなりに静かな穏やかな気持ちで過ごしていたわたしに
カッ!と火がついたのは、その時でした。




※ 10年以上前に交通事故に遭った簡単な顛末記です。
 なぜ⑤まで来てしまったのか分かりません。
 はやく書かないと梅雨時が終わってしまう…タイトル失敗したなと
 焦っています。