この町内の片隅から

よく分からない

梅雨時に思う ⑫


頭から布団をひっかぶり、腫れぼったい顔でぐるぐる考えました。


(何でか分からんけど、しんどくてご飯も作れない。ここにいると彼らに…
注: 対象は主に2人の息子…
彼らに、食べるものも作ってやれない。すごく悲しいツラい。
やらなきゃ!でも動けない。動かない。
自分を責める気持ちで、しんどくなる一方だ…)




その日もごろごろ転がっていたのですが、家に1人いた上の息子Aに


『あのさ〜しばらく◯◯(実家のある地名)に帰ろうかな?』


ここ最近、様子が変だったことを敏感に察知していたらしい彼は、
(別に敏感じゃなくても見れば分かるか?)
ゲームに夢中になりながら、上の空で、


『あっそう。行きャア。』
(ちゃんと聞いてなかったのかな?まぁいいか)


味方を得た思いですこし元気を取り戻したわたしは
残る力を振り絞って、息子のスポーツバッグに手当たり次第
身の回りのものを詰め込みました。


下着、着替え、歯ブラシ、靴下…




『じゃ、お父さんにテキトーに伝えといてね。
◯◯(弟)のこと頼むわ。何か食べてね。何もないけど…
じゃ!また!』

まだゲームに夢中の息子にそれだけ声をかけて家を出ました。


よろよろと重い荷物を抱え、トボトボ駅に向かいました。





少し暑さが残る今ぐらいの季節だったと思います。
実家の最寄駅に着いた頃、辺りはすっかり暗くなっていました。
もう少しだ、もう少しで着く、お母さんに会える。(情けな〜〜)
それだけを支えに夜道をひたすら歩きました。


最後の横断歩道を渡り終えました。


渡り終えた先はベンチと噴水とあちこちに植え込みがある小さな公園です。


春先に見た景色が不意に頭に浮かびました。
20メートルほど続くこの植え込みは『雪柳』です。
春先には、真っ白い可憐な花が揺れていました。




(よかった!ともかくここまで来れた。)


そのとき、突然ストンと胸のつかえが下りたのです。
もやもやし続けていた胸のつかえの代わりに湧いてきた感情は、


『あ〜お腹が空いた』


ここしばらく感じることのなかった空腹感でした。







※  何年も前の交通事故の顛末記です。
 検査では異常が見られませんので、
 その時も、これから先も絶対誰にも認めて貰えないことは分かっていますが、
 それだって後遺症と呼ばれるものではないか?と少し
 疑っていることをポツポツ記しています。