この町内の片隅から

よく分からない

わが決断に悔いあり


その夕方、最寄り駅の構内にて地元の飲食店の
出店イベントがありました。
ケーキ、和菓子、お酒、居酒屋風お惣菜…
ちょっとした立ち呑みテーブルの用意まであります。


おいしそうだけど、高そうだな…
賑わい始めた屋台を横目にサッサと通り過ぎようとしたところ、
いちばん端の屋台に食べ物でも飲み物でもなく
本だけがズラリと並べてあるのに気がつきました。


文庫本、ハードカバー、絵本などがぎっしり並べてあります。


パッと目を引いたのは
赤い表紙の文庫本
谷崎潤一郎『痴人の愛』でした。


懐かしさに思わず手に取り、パラパラとページを捲りました。


しばらく迷いましたが、
もしかしたらウチの本棚に収まっているかもしれない、
そう思い、購入に至りませんでした。



18か19で初めてこの本を読んだとき、


(実直に生きてきたのに、たった1人の女に人生狂わされて、
なんてバカなんだろう。気持ちわるい 
ベタベタと未練たらしく気持ちがわるい)


もう粗筋はおぼろげですが、
吐きそうなくらい嫌悪したことを覚えています。






駅からウチまでの道を歩きながらぼんやり思い返しました。


(でも、人生狂わされるほどの女に出会えた主人公は幸せだったんだ。
人生狂っても構わないほどの人に会えたのは幸せなんだ。
最期まで気づかず、狂わされたままだったらそれでいいのだ)




ときどき違和感を感じながらも、刷り込まれた形を幸せ?と思ってきました。
思わされてきたのかもしれません。


狂ったように見えても、道を踏み外しても(ある程度の条件付きで)
他人の目に気持ちわるく映っても
そういう幸せもあるかもしれない



やはり買えばよかったです。



『わが決断に悔いあり』

この2冊買ってしまいました。