この町内の片隅から

よく分からない

フェンス越しの線路

誰かに言いたくて仕方なかったのかもしれません。


『浮気』
『不倫』
『相手はシングルマザー』
『探偵事務所』
『弁護士』
『慰謝料』

一旦口火を切ったら、歯止めが効かなくなったのでしょう。


怒涛のように聞きなれない言葉が次から次へと
耳に流れ込んできました。


時には静かに、時には諦めたかのように淡々と、
しかし、すぐに復活して叩きつけるような太鼓のリズム。


いままで蓋をしていただろう感情が、
シュルシュルビュンビュンと
絶え間なく流れ込んできました。


途中から耳を塞ぎたくなりましたが、席を立って帰るわけにも
いきません。




久しぶりに会った友だちの話題のひとつは、
数年前、ご主人がされたという不倫の顛末でした。


黙って聞いて、黙って帰りました。



非常に疲れた気がします。
その日から約2週間、どうも調子がよくありません。
人のせいにしてはいけませんが、
彼女のしたたかな生命力に圧倒されたのかもしれません。




同じ立場だったら?と考えました。


わたしだったら面倒なので
たぶん放置するでしょう。


人の気持ちを支配することなんて出来ないし、
なるようにしかならない、と
思うかもしれません。


考えるのも面倒ですし、
例えば、その筋の専門家に依頼して、真実を暴いたところで
虚しくなるだけのような気がします。



外野だから、
他人事だから、
そんなことが言えるのでしょう。



この世には『知らない方がいいことがある』
そう思っています。



『本当のことでも言わない方がいいこともある。
墓場まで持って行かねばならないことがある。
何事も一つ所に留まるモノはない』


寂しいですが、そんな風に思っています。


フェンス越しの線路