この町内の片隅から

よく分からない

車内にて

電車の扉がプシューと開きました。


ホームには2人の駅員さんに付き添われた車椅子の男性。
大柄でガッチリした体格の方です。


車椅子ごと乗車するのだろうか?やや緊張しながら待ち構えていましたら、
乗車口の手前でよろよろと車椅子から降り、おぼつかない足取りながらも1人で乗車
されました。


小脇に抱えたコート、黒いビジネスバッグ、幾つものレジ袋、傘、
紙パックのお茶…(なぜかいちばん大きなサイズ)


両手に抱えきれないほど細々した荷物です。


抱えた幾つもの荷物が手に余るのか、次々と床に落とし、そして不器用に
拾うといった動作を繰り返されます。


まだお若い感じで、お身体の何処かが不自由にも見えません。
妙な雰囲気に息を呑みながら様子を窺っていました。



夕方のラッシュ時には少し早い時間帯。


混み合っているほどではありませんが、座席はいっぱいです。
シートのいちばん端に座るわたしの直ぐ横には、
黒っぽいコートの男性が、手摺りを掴んで立ってみえます。
手荷物の多いよろよろの方は、その隣に立たれたので、視界から消えましたが、
忙しない音は途切れなく耳に入ります。


ビニール袋のカサカサする音、
体勢を立て直そうとするのか、小刻みに移動するような音、
抱えたものを落とす音、
屈んでガサゴソ拾う音。


あ!わたしの目の前にどっしり重そうな紙パックのお茶がドサッと落ちてきました。
拾うべきか?一瞬ためらったので間に合いませんでした。
不器用ながらもご自分で拾われました。


席を譲るべきか否か?
でも、今日は腰が痛いし…立ちたくない


周りを見ると、特に気に留めている方はいないようです。
隣に座る人をチラッと見ました。
スマホに目を落とし、平然としてみえます。




下車するまでの短い時間、躊躇い続けました。
次の駅に着いたら別の車両に移動しよう…何度も思いましたが、
金縛りにあったようで、動くことができません。
忙しない音に気持ちがザワザワし続けました。


途中でハッと気付いたのですが、間のわるいことに
自分が座っている席はオレンジ色の優先席でありました。




フェンス越しの線路です




到着した駅のホームに降り立ち、ようやっとホッーと大きく息をつくことができました。