この町内の片隅から

よく分からない

チラシ

3日ほど覗かなかっただけで、
どっさり溜まっていた。
季節の変わり目に送られてくるズシッと重い通販カタログの類、
ピザ屋、宅配寿司、塾のチラシ、スイミングスクール、
水道修理のシール、リフォームの案内、市の広報…
1階にある集合ポストの中を見ただけで
うんざりした。


中身を検めることもせず、資源ごみ直通が殆どだ。


郵送停止をお願いしようと思いながら、ついつい
後回しになってしまっている。



重量のある郵便物を抱え階段を上がって部屋に戻った。
あ!ドアを開けた拍子にずっしり重い郵便物の中から、
1枚のチラシがひらりと玄関の床に滑り落ちた。


毒々しい黒紫のカバー色は、あまり目にしたことがない。




血塗られたような大きな文字で、


『呪い引き受けます』とある



① 1週間コース
② 1ヶ月コース
③ 1年コース
④ 特別コース
⑤ その他 何でもあり


呪いの種類はお任せください
あなたの恨み晴らします


呪いの魔術師






何だ、このチラシは?怪訝に思いながらも、
記憶から消し去りたい、ある人の顔が頭に浮かんだ。
あの人は忘れているだろうが、何年経っても自分は
忘れることがない。あの人にされたこと、言われたこと、悔しかったこと


しかし、だからと言って
呪いをかけるなんて卑怯ではないだろうか?
でも、思いだすと未だにムカムカする


数日悩んだ。
どうしても決心がつかず、呪いの魔術師に
連絡することはできなかった。


迷っている間は頭の中に霞がかかったようで苦しかった。
自分の中の醜いものと対峙するからか、苦しかった。


すこし未練はあるが、
やっぱりやめよう!と決めたら
曇り空がサッと青空に変わったかのような清々しさを覚えた。


資源ごみの日を待たず、自分の中の汚いものと一緒に
禍々しいチラシを捨てた
これでよかったのだ。


久しぶりに気持ちのいい眠りにつけた




次の朝、起きると身体中が痛い
だるい 重い 吐き気がする 頭が痛い 腹が痛い 腰が痛い
肩が痛い 足が痛い 手首が痛い


起き上がることができない。


病院で調べても、原因不明と言われた。
対処のクスリが出されるだけだった。
苦しい日々が続く



苦しい中で1つの可能性に思い当たった。


呪いのチラシが配布されたのはウチだけでは無いはず
…ということは?




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苦しくても痛くてもポストに郵便物は溜まる
また数日ぶりに覗きに行った。


ずっしり重い郵便物の中から、するりと床に落ちた
1枚のチラシに大きく書かれている血文字は


『呪い返し引き受けます』


………





※  集合ポストを覗いたら、郵便物がたくさん溜まっていました。
 うんざり仕分けしながら、何となく頭に浮かんだ妄想と
 特に意味のない画像です。