この町内の片隅から

よく分からない

歯科検診

さっきから軽快にペラペラ喋っていた先生が、突然
『ハックション!』
くしゃみをされました。


ここは、ポッカリと口を開けて横たわるしかない歯科医院です。
何という名称なのか、じっくり見たこともありませんが、
歯石を取る機械?で口の中をガッーと処置されている時のことでした。


口の中で、微かに手元がズレたことを感じ、思わずヒヤリとしました。



ときどき、頭の中で勝手に怖れてしまう妄想があります。
それは、自分が何かの手術を受ける羽目になる場面です。
手術中に地震が起こって急な揺れが起きたり、
執刀される先生の血管が突然詰まって倒れたり、くしゃみや咳で手元が狂ったり…


なぜ、起きてもいないことに恐怖を覚えるのか分かりませんが、
まぁ大丈夫だろう、と楽観視しながらも、
頭の隅に何故かそのような怖れがあり、
気持ちの調子がわるかったりすると、拭っても拭っても拭い切れない時があります。




歯科検診の帰り、降りしきる雨の中を歩きながら考えました。


わたしは前世でそのような形で亡くなったのかもしれない。
恐怖と恨みを記憶の何処かに残したまま生まれ変わったのかもしれない。
痛みなく即死してたらいいな。
痛みが続くのだけはイヤだな。
だから痛みにめちゃくちゃ弱いのかな?




それにしても、毎度のことですが、処置の間中、喋りまくる先生です。
ときどき、相槌を求められたり、質問されることもあります。
やっぱり相手がある方がいいのでしょう。


ボンヤリ聞き流していましたら、


『ねぇねぇ、ところで趣味って何?』


(え⁉︎  廃屋探し、廃墟巡り、見るだけだけど電車好き…かな?
本も読むな。全国寂れた駅舎巡りがしたいな。
何の話だったんだろう?何でそんなこと聞かれるんだ?)



一瞬、狼狽えましたが、


『先生、いま口が利けないです。』


(…そう答えたと言うことは口が利けたということか?)








滴る雨粒…なお一層おいしそうに見えます。
我慢して見るだけに止めました。