妄想のブログ記事
若葉のころ
若葉のころでした。 何通かのダイレクトメールと一緒に一通のハガキが届いたのは… クルッとひっくり返すと真っ白いハガキいっぱいに大きく、 『ヒダリ』 誰が送ってきたか分かりません。 何のことだろう? 何処から届いたのだろう? 気になりましたが、日常に紛れ、妙なハガキのことは忘れてしまいました。 その... 続きをみる
花火
『こちらです。どうぞ』 枯葉色のドアを開け、中に入る不動産屋さんに続き、 半畳ほどの狭い三和土に立ちました。 1Kの部屋全体に立ち込めるムッと異様な匂いに、 暫し言葉を失くしました。 20代前半の頃、実家を出てひとり暮らしをするため、 駅近の手頃な部屋を探していた時のことです。 (帯に短し襷に長し... 続きをみる
ジュリアーナ
『ふふふっ』 天から声が降りてきた? それとも幻覚なのか? ダイジョブ?…自分 薄手のカーテンでシャッと仕切られただけの四角い箱、 靴を脱いで上がったここは大きなショッピングモールの片隅にある試着室です。 試着室に引っ掛かっているS字フックに、細い足をぶらぶらさせて座っているのは 見たこともない『... 続きをみる
海
あんな些細なことで怒るなんて思わなかった。 考えなしに言葉を発した自分がわるかったのだろうか? 喉元まで込み上げる塊をグッと飲み込んだわたしは、 上下の取り合わせも何もなく、手近にあった服にサッと着替え、 財布とケータイだけリュックに押し込んで、黙って外にでました。 行くあてもありません。 (遠く... 続きをみる
骨董市
『ちょっと!あなた!お待ちなさい! アタシを見るのよ!』 突然呼び止められ、きょろきょろと辺りを見回しましたが、 誰もいません。 (空耳かしら? それにしても随分はっきり聞こえたわ?) 『空耳なんかじゃなくってよ!アタシよ! ア・タ・ク・シ! あなたの直ぐ目の前よ。 ボッ〜と通り過ぎるんじゃないわ... 続きをみる
花粉の日々
今年も、怖れていた日がやってきた。 ある朝起きたら、目が腫れ上がっていた とてつもなくダルい 何年か前の春先、突然症状が現れて以来、 それは毎年律儀にやってくる。 この頃は空気が乾燥するから、唇がカサカサに荒れて時には血が滲む ダル過ぎて、リップひとつ塗ることすら面倒だ (ムラがあるが、自前の口... 続きをみる
チラシ
3日ほど覗かなかっただけで、 どっさり溜まっていた。 季節の変わり目に送られてくるズシッと重い通販カタログの類、 ピザ屋、宅配寿司、塾のチラシ、スイミングスクール、 水道修理のシール、リフォームの案内、市の広報… 1階にある集合ポストの中を見ただけで うんざりした。 中身を検めることもせず、資源ご... 続きをみる
近う寄れ
青くさい高校生のガキでもあるまいに、 その人とすれ違うと心臓が高鳴る。 このマンションに入居してかれこれ25年になる。 鉛色の空から雪でも舞いそうな入居者説明会のあの日、集会室にポツンと座る、 あまりにも似過ぎるその人を見た瞬間、驚きで椅子に蹴躓きそうになった。 ところどころに数台置いてある灯油ス... 続きをみる
パラレルワールド
『そういえば、先生が交通事故に遭って、2ヶ月くらいお休みしたことあったね〜 いっぺんに気が緩んだよね。』 それまで賑やかに思い出話を共有していた6人の和やかな顔が 一斉にスッと怪訝な色に変わりました。 ひとりが、 『先生が交通事故で休んだことなんてあった?』 そう口にすると、あとの5人も 『覚えて... 続きをみる
ある整体師の話
『疲れるといつもココが痛むんです。』 その人が指差す箇所に軽く手を触れた私は、ギクッとした。 何百人もの心身の不調を訴える人々を快癒に導いてきた私にとって それは初めての違和感だった。 (必ず一瞬で感じるのに、触れても見ても何も分からない。 不思議だ?ヒトの姿をしているがこの人は未確認生命体なのか... 続きをみる
歯科検診
さっきから軽快にペラペラ喋っていた先生が、突然 『ハックション!』 くしゃみをされました。 ここは、ポッカリと口を開けて横たわるしかない歯科医院です。 何という名称なのか、じっくり見たこともありませんが、 歯石を取る機械?で口の中をガッーと処置されている時のことでした。 口の中で、微かに手元がズレ... 続きをみる
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