鴉
ジリジリ後退りしました。
文字通り驚愕して、目を疑いました。
初めてソレを見たのは2ヶ月ほど前のことです。
静かな住宅街の一角にあるゴミ集積所にて宙吊りになったソレは、
ゆらゆらと風に揺れていました。
たまたま通りかかった一角でした。
向こうから一組のカップルが談笑しながらやってきます。
きっと驚くだろうと待ち構えていましたら、
彼らは直ぐ傍まで来ても顔色ひとつ変えず、
笑いながら通り過ぎて行きました。
気になって仕方がないので、もう一度
その場所に行ってみました。
いました。
何ヶ月か前と寸分変わらぬ光景です。
しばらく立ち竦んでいましたら、
近所の方と思われるご婦人が通りかかったので
思わず、
『あの…コレ?』
『あぁコレね。カラス避けの作り物なのよ。
ある朝、突然吊り下げられていたからびっくりしたわ。』
(…カラス避けの作り物だったのか。どうして予告もなく
吊り下げられたんだろう?
カラスばかりでなく、近隣の人達までも陥れようとしたのかしらん?
実はそっちが狙いだったりして?)
どんなに衝撃的な場面でも、見慣れると
それは風景の一部と化してしまいます。
慣れるということ。
いつの間にかそれが当たり前になること。
冷静に考えたら、本当はおかしなことなのに
おかしいと思えなくなること。
カラス避けに限らず、そんな場面は幾つもあるのでしょう。
まずは、厄除けの画像から
では…宙吊りの画像です。
『鴉』って気分になりました。
作り物のカラスです。
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