この町内の片隅から

よく分からない

ある整体師の話

『疲れるといつもココが痛むんです。』


その人が指差す箇所に軽く手を触れた私は、ギクッとした。
何百人もの心身の不調を訴える人々を快癒に導いてきた私にとって
それは初めての違和感だった。


(必ず一瞬で感じるのに、触れても見ても何も分からない。
不思議だ?ヒトの姿をしているがこの人は未確認生命体なのか?)



しかし、どこにも看板を出さない、固定の店もない、
完全に口コミだけでのしあがってきた私のプライドが、
正直な見立てを口にすることを阻んだ。


数多くの経験、いままで培った知識を総動員して、当てずっぽうでもいいから
とにかく施術するしかない。
絶対に弱気を見せてはダメだ。
私を信頼の目で見るこの人のためにも。自分のためにも。



どのような対象者であろうと、サッと触れたら、神に導かれるように
その身体自身が治癒に至る道筋を示してくれる。
私は導かれるままに対象者の身体をなぞればいいだけなのだ。
怪しげな話だが、本当にそれで何百人もの人を治してきた。
病院で匙を投げられ、私を頼ってきた人も数知れない。



私は鍼灸とか整体とか、そういった類のことを正式に勉強した訳ではない。


信じ難い話だが、ある日突然、神から力を授かったのだ。
触って見るだけで分かる。この手で不具合を取り除くことができる。




1時間頑張った。
疲れた。
分からない。



『どうですか?痛みが引いたでしょう?』


その人は起き上がって室内をぐるりと一周した。


『すこし痛みが引いた気がします。』


気がするだけだろう、と私は思った。
ここで強くとどめを刺す。



『徐々によくなっていきます!大丈夫!』



私の心の内はオロオロ不安だが、それを表にだす訳にいかない。
ゼッタイダイジョブ。四六時中自信満々の私でいなければならない。
私は神に選ばれしカリスマなのだから。



『ありがとうございました。』



どこか不安な面持ちを隠しきれないその人は、
それでも規定の料金を支払って帰っていった。



料金を貰うことに気が引けたが、引き下がる訳にいかない。
この仕事、何があっても自信たっぷり、失敗しても貰うものは貰わねばならぬ。
いついかなる場合も強気でなければならないのだ。


安心を与えるために。
信じ切ることも治療の一環なのだから。
施術よりそちらの方が大事かも知れない。




非常にやりにくい人だった。
もう2度と来ないでほしい。
微かに残っている良心がチクチク痛む。


神に授けられた力とは言え、ごく稀に苦手な人もいるもんだな、と
改めて思った。


仕方ない。私はまだ人間なのだから。




特に意味はない画像の象





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『その場で痛みが引いた』


知り合いから耳寄りな話を聞き、半信半疑でしたが、
隣の街の整体師さんを訪ねました。
看板も広告もないです。
口コミだけです。
それがまた、信頼できる要因のひとつに思えました。


施術を受けてから数日経ちました。
あまり変わりないです。
おかしいなぁ?
わたしには効かないのかな?
もうリピートするのはやめた方がいいかな?
YouTubeでも観ながら自分で何とかした方がいいかな?
あ〜あ憂うつ…


大したことないのですが、
人一倍痛みを感じる面倒な自分です。




神さま。わたしにも力をお与えください。
施術代金1人500円にしますから。



いえ…やっぱり2000円は欲しいです。








※ 疲れると、ある1箇所に痛みが出やすいので、この際根本から治したいと思い、
知り合いが紹介してくれた
整体師さんのところに行きました。
難しい病気でも良くなった方が何人もいらっしゃるそうです。
整形のお医者さんでも通う方がいらっしゃるそうです。


けっこう期待して行ったのですが、よく分かりませんでした。
腹いせに?頭に浮かんだ妄想です。
妄想90%事実10%ってとこでしょうか。


チクショー!自分で治します。