ロウバイ
ウォーキングAコース途中に、畑付きの一軒家があります。
いつの頃からか、その家に住むおじさん(80代と言ってた)と一言二言口をきくようになりました。
〜〜〜〜〜〜〜
スーパーやコンビニの棚に、バレンタインコーナーが設けられるようになった頃、
(そういえば、おじさんに何もお返ししたことないなー)
ハッと気づいた
別に仲良く話すわけでもないけど、通りすがりに、ほうれん草やらキウイやら茗荷やらゴーヤなんかをもらうことがある
畑から引っこ抜いたほうれん草を、袋に詰められるだけ詰めて
「持ってけ」
濃い緑のほうれん草、クキクキでおいしかったなー
買ってきたばかりのパイナップルを、パカっと切って袋に放り込んでくれたこともある
パイナップルもおいしかったなー
いつだったか、タッパーにお惣菜を詰めて持ってった
「まずかった、もう持ってこんでいい」
なんて言ってたな
人に言われる言葉に引っかかって、くよくよ考えることが多いのに、
なぜかおじさんの言葉に引っかかったことはない
口のわるいおじさんだった
なぜか気にならなかった
何を言われても、気にならなかった
(あっそう、また言ってら)
って笑えるだけだった
その日、ちょっとだけ迷って、スーパーの棚から1枚の板チョコを手に取った
昔からあるような何の変哲もない板チョコ
200円でお釣りが来るような板チョコ
どっかの菓子屋が作ったイベントに乗せられるのがイヤで、誰かにあげることは滅多にない
畑の脇に置いた手作りの椅子に腰掛けて、道行く人を見てたり、何かの作業をしてることが多いおじさんだったけど、その日はいつもの場所に姿がなかった
初めてだな、ピンポンするなんて
表札をみて、改めてその名を知った
玄関脇のブザーを押すと、おじさんは奥からのっそりでてきた
昼寝でもしてたんだろうか
髪がボサボサに乱れてる
「これ」
むき出しのまま手渡すと
心なしかニコッとしたような気がした
(え?笑った?)
いや…寒さで顔が引き攣っただけかもしれない
「別にそういうやつじゃないから、お返しいらんやつだから」
早口でまくし立てて、すぐ立ち去った
その後、いろんな事情が重なって、ウォーキングAコースを歩く機会がなくなってしまった
気にしてた
どうしてるかなって気にしてた
いつでも会えると思ってた
近所の友だちが連絡くれるまで知らなかった
この正月、旅立たれたなんて知らなかった
あれから何回か、家の前を通りかかった
すこし荒れだした畑を寂しい気持ちで通り過ぎてから、気になって振り返ってしまう
畑の脇に置いた手作りの椅子におじさんが座ってる気がして、何度も振り返ってしまう
「おいっ!」って手招きされてる気がして振り返ってしまう
おじさんが、のそっと姿を現しそうな気がするから、
勝手口をじっと見つめる
大した話もしなかったし、べつに好きでもなかったのに、いつまでも気になる
もっと行っとけばよかった

今年も、庭先のロウバイがきれいだったよ